04/50|禊(テーマ勘違い)

4:禊(みそぎ)→風呂(テーマ変わりすぎだろ、振り向いては〜とは違うお風呂ネタ)
 昼からやまない雨をぼーっと眺める。BGMは水たまりに水がはじける音と、心地いい風。
雨が続くなら、こんな森の中にお客は来ないもの。今日はお店はお休みの料理屋だ。
 射命丸は朝早くから出かけて行った。雨でも取材は休まない、彼女の情熱を素直に感心。
ポットからお茶のお代わりをカップに注いで、今日は一日中読書なのだと、そんなことを
考えていると、抱きつかれて不意に目が塞がれた。冷たくて、濡れている。でも僕は驚かない。
何故ならそれは、
「……だーれだ?」
「それは私のセリフですよ」
 言わなくてもわかる。それよりも、背中が妙に冷たかった。
「文?」
「なんですか?」
「……おかえり」
「はい、ただいま」
「お風呂入っておいで」
「一緒に?」
「……僕は本を読んでるから」
「でも二人ともびしょぬれですよ?」
 見ると背中がぐっしょりだった。というか射命丸がびしょびしょだった。白いブラウスも
濡れてしまっており、何とも目のやり場に困る。
 ていうかそこから計算づくだったんじゃ?
「なんで傘持っていかないのかなぁ」
 立ち上がって手近なタオルで射命丸の頭を拭く。風呂に入る前だって拭いておくに越したことは無い。
風邪引いちゃいけないし、直視できないし。
「えへへ、たまには濡れ鼠で帰るのもいいな、って思ってですね」
「文の場合、濡れ鴉?」
「鴉の濡れ場って言うんですよ」
 字が違え。
 
 
「ほらほら、早く入らないと風邪ひいちゃいますよ〜?」
 そう言って手を引かれる。実はさっきから入るか入るまいか微妙なところで、お湯だけは
沸かしておいたのだ。こんな時ばっかりの自分の用意の良さを恨む。
「もしかして、一緒にお風呂、いやです?」
 あまりに僕が抵抗するから、なんだか射命丸が少し困ったような顔で聞いてきた。その質問は
反則じゃないか。
「嫌じゃないんだけど、その、恥ずかしいじゃないか」
 濡れたブラウスだけでこんなにドキドキするのに、バスタオル一枚とか、そんなのに遭遇
したら僕はどうなってしまうんだろう。いや、どうもしないけど。なんて考えていると、
僕の反論を無視したのか気にしてないのか、
「は〜い、ぬぎぬぎしましょうねぇ」
 とか言いながら僕の着物を脱がしにかかってきた、というか、脱がされてる。
「ちょ、待て待て待て待て」
 上半身があっという間に素肌になってしまった。
「なんですか? せっかくノってきたのに〜」
 変な勢いに乗らないでほしい。切実に。
「どこで仕入れたか知らないけど、……本当にいいの?」
「何がですか?」
「一緒にお風呂」
「いいじゃないですか、お風呂くらい、そんなこと言われたら、逆に意識しちゃいますよ?」
 少し頬を赤らめて射命丸が流し目を送ってきた。意識しそうになるのを強引にねじ伏せる。
「むしろしてくれ、積極的に」
「○○さんのえっち」
「僕かよ」
 何だか納得がいかない。
 しかし、そんな問答をしていると射命丸が不意にブラウスのボタンを一つ外す。
「先入ってくれないと、私が脱げないじゃないですか。それとも……ここで、見ていきます?」
「!! 先入ってくる」
 急いで脱いで(もちろん先に腰にタオルはまいておいたぞ)、風呂場へ。そこで気づく。
「しまった、いつの間にか一緒に入ることになってる」
「〜〜♪ 〜〜〜♪」
 扉の向こうから鼻歌と一緒に少し濡れた衣擦れの音が聞こえる。なんだか、見るより
いやらしい気がするのは気のせいだろうか。まぁいいや、とりあえず頭でも洗うか。
 湯船の温度を確認する。少し熱いので水を足しながら調節。
 ……こんなもんか。浴槽をかきまわしながら、納得する。
 まず頭からお湯をかぶって、冷えた体を温める。もう一回。少し熱めのお湯が、今は心地いい。
「あー! もう洗い始めてる!」
「待ってたら風邪ひいちゃいそうだったから」
「それもそうですけど……じゃあ、お背中流しますね?」
 言うが早いか、背中にふたつの、何か柔らかいものが当たる。なんかにゅるっとしてる。
「あ、あああ文っ!?」
「はい?」
「なななな何で洗ってるのかなぁぁぁ!?」
 思わず叫んでしまう。ていうか背中に密着しないでください。それはこっちの理性がやばい。
すると背中からすっと離れた射命丸が
「えー……だって○○さんの読んでた本に書いてましたよ?」
 と、首を傾げる。誰だそんな本置いておいた奴は……僕だああああ!
 激しい自己嫌悪と背中に残るやばい感触に頭がぐるぐるしてきた。
「あ、洗うなら普通に洗ってくれないか? 流石にそれはマズい」
「何がまずいって言うんですか?」
 正しいんだけど、清くなくなっちゃう所とか?
「……ともかく、普通に洗ってくれると、とても助かる」
「はーい。……ちょっと私も気持ちよかったんですけどね」
 そこまでよぉぉ! パッチェさん早く来てぇえぇ来ないでぇぇえ!?
 
 間。
 
 その後はわりと普通にお互い体を洗いっこして、一緒に湯船に。ぶっちゃけるところ自分を
抑えるのに必死だったのでそこら辺はカット。
「ふぃぃ……気持ちいいです」
 目の前で背中を向けている射命丸が嘆息を漏らす。僕の体の間に射命丸が挟まったような
形で湯船に収まっているので、正直射命丸の洗いたての髪の毛の匂いがダイレクトに鼻腔を
直撃する上、綺麗なうなじを見下ろせるベストアングルという、なんとも素敵なポジション
だったりする。
「○○さん?」
「んー?」
「狭くないですか?」
「丁度いいよー」
 正直それは僕が射命丸に聞くべきセリフだったような。そんなことを考えていたら僕の方へ
寄りかかっていた彼女が上を向いて目が合った。心なしか頬が紅い。湯あたりだろうか。
「……当たってますよ?」
「……当ててるんだよ」
 言ってみたがただの変態だった。射命丸がくすくすと笑う。
「○○さんのえっちー」
「……これでも極限抑えてるんだぜ?」
 そっぽを向く。これ以上目を合わせたら負ける。何かに。
「別に抑えなくても良いんですけどねー?」
「結婚までは、ね」
 とりあえずその線引きはしっかりとしようと決めていた。古風な言い方だとBまでってやつ。
「頑固なんですね、そんなところも好きですよ?」
「そこでその言葉はダメだわ」
 覆いかぶさるようにキスをする。射命丸がびっくりしたように体を強張らせたけれど、
すぐにふやっと体を預けてきた。
 
 
 結局、二人とものぼせたのは言うまでも無い。
「僕たち……バカだな」
「あはは……バカですね」
どっとはらい

@あとがき
禊じゃねぇぇぇぇ!煩悩全開じゃねえか!
ていうかさっき思い出したけど禊って水垢離のことだよね? てことはそもそも風呂じゃダメじゃん!
そうだよな、うわぁ。でも書いちゃったもんは仕方が無いのだ! てーまをかえてしまえ!
 
というわけでこんばんわ。
お久しぶりに射命丸ネタしか書けません。書く気がありません。
 
久々にお題。というか、御代の中でやりやすそうなものから手をつけていく。
お題と舞台を絡ませるのは、落語の三題話に似ていて、やる気が沸く。実力がないから
出来ないのだけど。
 
またぼちぼち書いていこう。
でもこれはイチャスレに載せられないんだ。
ていうか料理人って設定3行で吹っ飛んでるし、ね!
あ、それってもしかして三行変えるだけで一般文ネタになるってことか!?
それもそれで継続シリーズモノとしてどうかと。ま、アウトラインとイチャ成分は別ってことでここは一つ。
@あとがく